ニキのモデルは、大人気コスプレイヤーであり、
「初音階段」というバンドのボーカルでもある るしゃ さん。
そして、このアートビジュアルを手がけたのは、世界的アートプロジェクト・ANIMAREAL。
彼らは、マンガやアニメと“リアル”を組み合わせることで、
いままでにない新しいアート作品を生み出しています。
今回は、世界から注目されるANIMAREALの代表クリエイターである 市(いち)さんに、
ニキのアートビジュアルが、どのように制作が進められたのかをお聞きしました。
1.今回のニキのアニマリアルは、 まずどこから制作をスタートされたのですか?
いつもそうなんですが、スタートは衣装の布を買いにいく所からです。これは衣装メンバーではなく、必ず僕が買いにいくようにしています。
写真撮影を中心とした制作になるので、生地の素材感が非常に重要になってきます。通常、舞台などは「動く」「遠くから見る」事が前提として衣装を作られているので分かりやすい配色で、キラキラと派手で動きやすい物が求められます。
僕達のやっている事は全く逆で、静止画でジックリと見られる物なので、
非常に繊細な素材感や時代考証まで考えたリアルな物が必要になってきます。
僕は生地感がよく分かるもの、織りなどが目立つ粗い生地を選ぶ事が多いです。
2.市さんからみて、ニキはどんなキャラクターだと思いますか?
最近は、色んな葛藤の中生きているキャラクターですがこの作品を制作する時は「暗殺者」をイメージして制作しました。作品を作る時はそのキャラの特性を生かしたベストなシーンを考えます。
今回は「美しい殺し屋が夜空に舞う」イメージがピタっときて、それを具現化しています。
ツナシと出会った時は、自分の使命に疑問を持たず殺しを生業とする、所謂「暗殺者」として登場しました。復讐者でもありましたね。
ニキはずっと「自分の正義」を探して生きていくのだと思いますが、一度「正義」を見つけると、命に替えてもそれに殉ずる、意志の強いキャラクターだと思います。
その分、道を踏み外すとダークサイドに堕ちやすい、みたいな。この先、ニキが正しい道を歩む事を願っております。
3.ニキのアニマリアルは、前回のツナシのアニマリアルと、 どういった違いが有りましたか?
服が綺麗な事です!この作品を作っていた頃のニキにはまだ激しい戦闘が無く、服が破れたり傷を負ったりする描写がありませんでした。作品に無い物を創造する事は、僕達には絶対に出来ません。
冒頭のインタビューにもありましたが、アニマリアルを制作する上で服のディテールは非常に重要で、汚れたり破れたり、エイジングしているだけで
グッとクオリティが上がるんです。ツナシの場合は、服はボロボロだし、機械兵は壊れているし、迫力やクオリティが出しやすかった。
逆にニキは「美しさ」のみで勝負したので、そういったテクニックが使えず、非常に難しかったです。
あと、勝手に自分のテーマカラーとして作品自体の色味を「熱いツナシの赤」と「クールなニキの青」に分けたのですが、今になって思うと、ツナシがクールでニキが熱い性格なのかもしれませんね。笑
4.制作過程で、骨の国の建造物 グンダの羽根に付いている鎧 ニキの装飾物
について、市さんが独自の解釈を加えられたとお聞きしました。それぞれどのように解釈されたのですか?
骨の国の建造物についてですが、まず和風でも無く、洋風でもない世界観で、非常に無機質な感覚を受けました。
文明は進んでいて、ショッピングセンターのような物もある。曽田先生はその「文明」というものを「歯車」というアイコンで表現されていると感じました。そのアイコンである歯車を、よりリアルに強調して描写しています。また、手前だけではなく、窓の中や見えにくい箇所にも歯車を忍ばせています。「歯車がこの国の動力をエネルギーに変換しているのだ!だから全ての物、どんな場所にも歯車があるのだ!」という勝手なメッセージが込められております。笑
グンダの羽根についている鎧についてですが、今回、グンダは「コウモリのキャラクター」というよりは「ニキの翼」という解釈で扱いました。ですので、「グンダの鎧」ではなく「ニキの鎧」に見えるようにサイズ感やバランスに気を使いました。
ニキを美しき暗殺者として表現したいものの、衣装は「セーラー服」っぽいのです。そこに「殺し屋感」や「ファンタジー感」を付与する重要なスパイスとして使用しました。
ニキの装飾物についてですが、前述のグンダの鎧とカブるかもしれませんが、セーラー服以外の部分で、どれだけ「殺し屋感」と「ファンタジー感」を出せるか工夫しました。カラー絵で黄色に塗られていた、腰のパーツや袖のパーツの素材を、あえて金メッキの金属ではなく、「皮革」と決めつけ、職人さんにハンドメイドで制作してもらいました。それにより、戦による汚れやキズといった経年変化をよりリアルに表現出来たと思っております。
5.最新刊 第4集を読んで…
息を飲む迫力の戦闘シーン。ニキの絶望感がビリビリと伝わってきました。アクションも楽しみながら、二人の心の葛藤も楽しめる巻だと思います。また、主人公以外のキャラの魅力がそれぞれ引き出されており、皆の性格がより一層分かってきました。アップンは本当にいい奴だし、アモウは本当に頭がキレるし、何よりニキがめちゃくちゃ可愛い。ニキファン急増の予感です。
また、特に僕が深く感じたのは、骨の国の世界観ですね。ここに来て、作品の世界観がグッと深まってきたように感じます。国のグランドデザインともいうべき、世界観の構築が非常に上手く行われているように感じました。骨の国の核となるライタイト採掘場。街でのショッピング、一軒家、骨の国の伝統料理。
また、現在の地球とテンプリズムの世界をリンクさせるような伏線。さすがは曽田先生と。
次集をさらに楽しみにしております!
2010年、The London Central Saint Martins College of Art and Designに留学。写真や3DCGをメインに、手描きや特殊メイクなど様々な手法を用いてビジュアルデザインの表現を追求。「劇場版銀魂」のリアル化ビジュアルを始め、本能寺では原哲夫氏の個展に参加、「いくさの子」の信長をリアル化。現在は曽田正人氏の新作「テンプリズム」のリアル化ビジュアル、真島ヒロ氏の「フェアリーテイル」では月刊フェアリーテイルマガジンにてリアル化巻頭グラビアを連載中。映画『ドラゴンボールZ 復活の「F」』主題歌 ももクロ「Zの誓い」の一連のアートワークを担当。2014年にはジャパンエキスポに招待され、20,000人を動員。㈱アニマリアル 代表取締役。