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マンガとロックの新しいコラボレーションとして話題を呼んだ「テンプリズム× HOWL BE QUIET」のPV。曽田正人が初めて挑んだファンタジー『テンプリズム』と、2014年最注目のピアノ・ロック・バンド HOWL BE QUIETがジャンルの垣根を越えて融合したコラボレーションだ。今回、『テンプリズム』を読んで新曲「ライブオアライブ」を完成させたというHOWL BE QUIETのヴォーカル・竹縄航太に、このコラボレーションに臨んだ感想、それからバンド活動に賭ける想いを聞いた。

■ いつも「刺激」に飢えている

ーー 今回、マンガとのコラボレーションというまったく新しい試みに臨んだわけですが、普段の曲づくりに比べて難しさはありませんでしたか?

竹縄 いや、ほとんどなかったと思います。というのも、もともと僕は、曲づくりの過程で自分が「感動できるもの」を探しているところがあるので。

ーー 感動できるものとは?

竹縄 映画でも、音楽でも、マンガや小説でも、なんでもいいから常に自分が感動できる作品を探しているんです。楽曲や歌詞のインスピレーションが湧いてくるのって、自分が心底感動して、心が揺さぶられたときなんですね。だから、いつも刺激を受ける作品を探しているし、なにか感動できるものに触れていないと、表現者としての自分が枯れてしまうんじゃないかとさえ思っています。

ーー その意味でいうと、『テンプリズム』とのコラボレーションは、むしろやりやすかったわけですね?

竹縄 はい。曽田正人先生の『テンプリズム』と今回の新曲「ライブオアライブ」は、ほんとうに幸運な出逢いだったと感謝しています。マンガに歌を乗せただけじゃなく、世界観そのものが融合できたので。

■ テンプリズムと出逢い、歌の核が固まった

ーー 具体的に、今回はどういう刺激や融合があったのでしょう?

竹縄 じつはこの「ライブオアライブ」って、曲そのものは今年(2014年)の春くらいに出来上がっていて、LIVEでも演奏していたんです。ただ、どうしても歌詞に納得がいかず、ずっと悩んでいたんですよ。ぼんやりとした外側だけは出来上がっているんだけど、核になる部分が言葉にできず、自分でもうまく掴めていなかったというか。『テンプリズム』を読ませていただいたのは、ちょうどそんなときでした。もう、自分でも驚くくらい主人公のツナシに共感して、感動しましたね。すると自然に、空洞だった歌詞の「核」が固まってきて、いまの「ライブオアライブ」を完成させることができました。

ーー その「核」になる部分とは?

竹縄 これは曲のタイトルとも関係するところなんですけど、この曲をつくったのが個人的にいろいろと悩んでいた時期だったんです。それで、悩んだときって、色んな事を考えるじゃないですか。悩んでいた時に、ふと引っかかった言葉が「dead or alive」っていう言葉で。

ーー 生きるか死ぬか、みたいな。

竹縄 ええ。でも、それはちょっと違うんじゃないかと気づいたんです。どんなに悩んでも、どんな困難に見舞われても、僕たちに残された選択肢は「生きること」だけなんですよ。「生か死か」じゃなくって、生きるしかない。もし選択肢があるとすれば「どんな生き方を選ぶか」だけですよね。
僕が『テンプリズム』のツナシに共感したのは、自分の運命を受け入れて、生きることを選んだところ。しかも、自分だけの生き方を選んだところだったんです。そして「この主人公のために歌うんだ」と思った瞬間、それまでぼんやりしていた歌の核が見えた気がしました。「ライブオアライブ」は、そんな意味を込めてつけたタイトルです。

ーー 歌詞だけでなく、鐘の音のようなピアノからはじまる高揚感にあふれた曲調も、すごくマンガの世界観とマッチしていますね。

竹縄 そうですね。マンガにあえて寄せた訳ではないんですが、世界観が重なる部分もあったりして、結果的にいい作品になったと思います。

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■ ステージに上がる喜びと苦しみ

ーー では、竹縄さんがバンド活動をはじめたきっかけを教えてください。

竹縄 小さいころから歌うこともピアノを演奏することも好きだったんですが、いちばん大きなきっかけは高校生のときに出場した、バンド の全国大会だったと思います。

ーー 全国大会!

竹縄 はい。それがきっかけで、僕らのLIVEをたくさんの人が観に来てくれるようになったんです。友達だから観に来るとか、頼まれたから観に来るとかじゃなくって、僕らの音楽が聴きたくて観に来てくれている。これは、ちょっと大げさにいうと、自分の存在が認められたような、他の誰でもない「竹縄航太」という人間が認められたような感動がありました。自分の中で、完全にスイッチが切り替わった瞬間でしたね。

ーー なるほど。

竹縄 実は僕、中学時代はバスケ部で。その時に表に立って活躍することもそんなに多くなかったんです。いわゆる補欠みたいな(笑)。もちろん自分の努力や才能が足りなかったからなんですけど、それがすっごい悔しくて。でも、バンドってメンバーの全員が「その人じゃないといけない」し、「誰ひとりとして欠かせない」という立場でステージに上がるんですよね。だからメンバーの結束も強いし。

ーー まさに仲間、ですよね。

竹縄 はい。いまのバンドメンバーは高校3年の冬からずっと一緒ですけど、彼らは間違いなく、世界一の竹縄航太ファンでいてくれる。そして僕も、それぞれのメンバーの大ファンだし、この組み合わせ以外には考えられないですね。

ーー でも、試合に出ることもなかった中学時代から一転して、ステージの上でスポットライトを浴びて、いまやバンドのフロントマンとして歌っているわけですよね。不安や緊張はありませんでしたか?

竹縄 むしろバンドを始めた当初のほうが気楽にやっていました。自分たちが楽しければそれでいいや、って感じだったので。それが少しずつお客さんも増えてきて、僕らを観に来てくれているんだ、ということを実感するに連れて、不安が強くなっていきました。正直、いまでもステージに上がる前は怖いし、緊張します。

ーー いまでも、ですか?

竹縄 たとえば、僕らが月に5日LIVEをやっているとして、うまくいかなかった1日があったとして、昔だったら「今日のはちょっと失敗だったな。次はがんばろうぜ」で終わっていたかもしれないけど、いまはそんなこと言えない。だって、その1日しか日程が合わず、その1日だけを楽しみに来てくれたお客さんもいるはずだから。そう考えると、絶対に失敗は許されないし、ステージに上がる前の緊張感はどんどん高まっていきますね。

■ 竹縄航太が読んだ『テンプリズム』

ーー バンド活動を続けていくほど、喜びも大きくなるし、苦しみやプレッシャーも大きくなるわけですね。

竹縄 でも、そういう立場になったからこそ、今回『テンプリズム』のツナシに共感できたんだと思うんですよ。

ーー どういうことでしょう?

竹縄 これは僕の勝手な解釈ですけど、たぶんツナシって、根っこのところは弱い人間じゃないかと思うんです。子ども時代だけじゃなくって、2年後の別人に生まれ変わったようなツナシも。

ーー へええ、一見ものすごく強い人間に見えますよね。

竹縄 ほんとうは平凡で優しい人間なんだけど、伝説の王子という運命を受け入れて、家臣のユイから託された想いを受け止めて、強い人間であろうと自分に言い聞かせている。「こういう人間であらねば」っていう強靱な精神が、いまのツナシをつくっていると思うんです。それって、バンドのフロントマンとしてステージに立つ自分の心境と、ものすごくシンクロするんですよね。僕も全然強くなんかないし、くじけそうになる時もあるけど、ステージに立つ事によって僕自身強くいられる気がするんです。

ーー それは竹縄さんならではの、かなり深い読み方ですね。

竹縄 そんなに深く考えて読んだつもりはなかったんですけど、そんな風に考えさせられる「テンプリズム」は凄く魅力がありますね。

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■ さらなるコラボレーション実現!?

ーー お話を伺っていて、最初に出てきた「幸運な出逢い」という言葉が大げさじゃないんだとわかりました。

竹縄 ええ、曽田先生のことはドラマ版の『め組の大吾』で知ったのが最初だったんですが、まさかこんな機会がいただける日が来るとは思ってなかったです。

ーー 今回の「ライブオアライブ」とは別に、もう1曲『テンプリズム』とコラボレーションする予定があるそうですね?

竹縄 はい。「千年孤独の賜物」という曲で、先日レコーディングを終えたばかりです。

ーー 千年孤独の賜物。かなり素敵なタイトルですね!どんな曲なんですか?

竹縄 今回の「ライブオアライブ」から一転して、今度の「千年孤独の賜物」は自分自身に向き合った曲です。曲調は全然違いますが、この曲も『テンプリズム』の世界観と意図せずマッチしたと思います。

ーー 楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました!

竹縄 こちらこそ、どうもありがとうございました!